
こんにちは。
カメリア美容皮ふ科 院長の澤田です。
今日は、ニキビ治療に使用するイソトレチノインについて、少し真面目なお話をしたいと思います。
最近、インターネットやSNSで、
「イソトレチノインがニキビにすごく効く」
「イソトレチノインを飲むと毛穴が目立たなくなる」
「オンライン診療ですぐに購入できる」
「個人輸入なら安く買える」
といった情報を目にする機会が増えました。
イソトレチノインは、確かに難治性のニキビに対して非常に有効な治療薬のひとつです。
当院でも、保険診療で外用薬や内服薬による治療を続けてきたものの、なかなか改善しない方や、炎症の強いニキビを繰り返している方に対して、診察のうえで処方しています。
だからこそ、最近の「簡単に手に入る薬」のような扱われ方には、医師として少し危機感を感じています。
イソトレチノインは「美容サプリ」のように飲む薬ではありません
イソトレチノインを飲むと皮脂の分泌が大きく減少します。
そのため、
「肌が脂っぽくなくなった」
「毛穴が目立ちにくくなった」
と感じる方がいるのも事実です。
しかし、
「毛穴を小さくしたいから」
「皮脂を減らしたいから」
「SNSで肌がきれいになると見たから」
という理由だけで、自己判断で内服するようなお薬ではありません。
イソトレチノインは、ニキビに対して高い効果が期待できる一方、全身に作用する薬剤です。
効果だけを見て、「飲んでみようかな」と判断してほしくない薬のひとつです。
「副作用が出たらやめればいい」ではありません
イソトレチノインというと、
「唇が乾燥する薬」
というイメージを持っている方も多いと思います。
もちろん、唇や皮膚、目、鼻などの乾燥はよくみられる副作用です。
しかし、それだけではありません。
内服によって、
・肝機能異常
・中性脂肪やコレステロールなど脂質の上昇
・血球数の変化
などがみられることがあります。
さらに、妊娠中の使用は重大な胎児への影響があるため禁忌です。
海外の添付文書でも、治療開始前に肝機能検査と脂質検査を行うこと、妊娠可能性がある方については妊娠していないことを確認したうえで処方することが明記されています。
つまり、
「調子が悪くなったらやめればいい」
という薬ではありません。
自覚症状がなくても、血液検査ではじめて異常が分かることがあります。

当院が「内服前の採血」を必ず行っている理由
当院では、イソトレチノインを開始する前に採血を行います。
これは単なる形式ではありません。
まず、内服を開始する前の状態を知っておくことがとても重要だからです。
たとえば内服開始後に、
「肝機能の数値が上がっている」
「コレステロールが高くなっている」
「血球数が変化している」
という結果が出たとします。
開始前のデータがなければ、
「もともと高かったのか」
「イソトレチノインによって変化したのか」
を判断しづらくなります。
薬を安全に使うためには、基準となる治療前の状態を確認しておくことが非常に大切です。
飲み始めてからも「診察と採血」が治療の一部です
当院では、処方して終わりではありません。
内服開始後も定期的に診察と採血を行い、
・ニキビがどの程度改善しているか
・副作用は出ていないか
・採血結果に問題がないか
を確認しています。
実際に数値の変化がみられた場合には、
一度内服を中止したり、
再検査をしたり、
再開する場合には量を調整したりすることもあります。
これは「慎重すぎる」のではなく、
薬をきちんと効かせながら、安全に治療を続けるために必要な管理
だと考えています。

個人輸入について、院長として思うこと
インターネットで検索すると、イソトレチノインを海外から個人輸入できるサイトが見つかります。
しかし私は、患者さんにはおすすめしていません。
理由は単純で、
「薬が手元に届くこと」と「適切な治療を受けること」は全く別だからです。
薬だけが手元に届いても、
現在の肝機能は問題ないのか。
脂質の値は正常なのか。
一緒に飲んではいけない薬はないのか。
妊娠に関するリスクは理解できているのか。
副作用が起きたとき、誰が判断するのか。
こうした部分が抜け落ちてしまえば、それは「ニキビ治療」とは言いにくいと私は考えています。
また、個人輸入では、日本国内で正規に流通する医薬品と同じように、品質・有効性・安全性が担保されているとは限りません。
「安く買えるから」
「病院に行かなくていいから」
という理由だけで選ぶには、イソトレチノインはリスクのある薬です。
オンライン診療なら安全なのでしょうか?
ここも、誤解してほしくないところです。
オンライン診療だから危険、対面診療だから安全、という単純な話ではありません。
オンラインでも、
・医師がきちんと診察をする
・既往歴や内服薬を確認する
・必要な検査を行う
・定期的に経過を確認する
・副作用が出た際に対応できる
という体制が整っていれば、医療として成立します。
私が心配しているのは、
「問診に答えたらすぐ薬が届く」
「採血をせずに継続して購入できる」
「副作用が起きても相談先がよく分からない」
というような、“薬を購入すること”が中心になってしまっているケースです。
イソトレチノイン治療で最も大切なのは、
「どこで買うか」ではなく、
「誰が診断し、誰が安全管理をするのか」
だと思います。
「効く薬」だからこそ、正しく使ってほしい
ここまで読むと、
「イソトレチノインは怖い薬なの?」
と思われるかもしれません。
私はそうは思っていません。
適応のある方に、必要な検査と経過観察を行いながら使用すれば、難治性のニキビに対して非常に有用な選択肢です。
実際、海外では重症・難治性ニキビに対する重要な治療薬として使用されており、従来治療に反応しない重症例に用いる薬として位置づけられています。
だからこそ私は、
本当に必要な方には、きちんと使ってほしいのです。
そして、きちんと使うためには、
診察・採血・副作用の確認まで含めて、ひとつの治療
だということを知っていただきたいと思っています。
ニキビ治療は「薬を買うこと」がゴールではありません
ニキビが長く続いている方の中には、
「いろいろな薬を塗ったけれど治らなかった」
「抗生剤を飲んでもまた繰り返す」
「ニキビ跡が増えてきてしまった」
という方も少なくありません。
そのような方にとって、イソトレチノインは治療の選択肢になることがあります。
一方で、すべてのニキビにイソトレチノインが必要なわけではありません。
今までどのような治療をしてきたのか、
どの程度の炎症があるのか、
ニキビ跡を残すリスクがどのくらいあるのか。
そうしたことを診察したうえで、
「本当にイソトレチノインが必要なのか」
を考えることも医師の役割だと思っています。
最後に
SNSやインターネットによって、患者さんが治療について多くの情報を得られるようになったことは、とても良いことだと思います。
一方で、
「効いた」という情報は広まりやすく、
「安全に使うために何が必要なのか」という情報は広まりにくい
とも感じています。
イソトレチノインは、ニキビに対して非常に有効な薬です。
だからこそ、
個人輸入や、検査・経過観察のない安易な処方で自己判断で飲んでほしくない。
これは、日々ニキビ治療を行っている医師として強くお伝えしたいことです。
カメリア美容皮ふ科では、イソトレチノインを開始する前に診察と採血を行い、内服開始後も定期的に状態を確認しながら治療を進めています。
「今までニキビ治療を続けてもなかなか治らない」
「イソトレチノインが気になっているけれど、自分に必要なのか分からない」
という方は、自己判断で購入する前に、一度ご相談いただければと思います😊